2018年は、まさに“副業元年”と形容できる年でしたね。
一部では、「副業解禁元年」とも呼ばれ、ソフトバンクやサイボウズなどの大手IT企業を中心に、副業を解禁する企業が増えてきてきます。
1月には、厚生労働省が「モデル就業規則」を改訂し、これまであった副業禁止の項目が削除され、副業を容認する規則へと変更されました。
こうした動きをきっかけに、大手企業を中心として、さまざまな企業が就業規則の改定に動いているのです。
事実、従来のモデル就業規則では、規則の中に副業禁止項目が設けられていました。つまり、各企業において、実質的に副業が禁止されていたということです。もちろん、それでも内密に副業する人はいましたが、それは全体のごく一部でした。
2018年の改定では、こうした副業禁止規定が削除されたことによって、勤務時間外における副業・兼業が認められるような規則に改訂されたのです。企業側が副業を容認する姿勢は、これまでになかったことです。
また、多くの企業で副業が解禁された背景には、安倍政権が推進している「働き方改革」の影響が大いにあると考えられます。
2017年に、政府の「働き方改革実現会議」が発表したモデルは、既存の働き方に大きな影響を与えているのです。
そもそも日本社会は、少子高齢化にともなう生産年齢人口の減少や、育児と介護の両立、さらには働く人々のニーズの多様化など、さまざまな変化に直面しています。こうした状況に対処するには、就業機会の拡大や意欲・能力を発揮できる環境の構築が欠かせません。
特に政府が掲げる働き方改革では、「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりが良い将来の展望を持てるようにすることをめざしています」と宣言されています。
ここで述べられている個々の事情とは、男女ともに、育児や介護など各人のライフスタイルに応じた対応のことであり、また多様な働き方とは、そうした個別の事情を快味した働き方を選択できる環境のことです。
高度経済成長期から現在まで行われてきたような個人のがんばり、つまり家庭生活やプライベートを犠牲にして残業したり、休日出勤したりするような働き方を根本から変え、残業を原則なくし、同一賃金同一労働を実現することが、そのためのひとつの答になっているのです。
このような働き方改革の潮流を鑑みますと、副業を認める風潮が企業の中に醸成されつつあるのも半ば当然のことと言えるでしょう。すでに一部の企業では、副業の容認が優秀な人材の獲得や成長、離職率につながると公言し、積極的に副業を推進しているところも出てきています。
さらに、副業のマッチングサービスや副業者のためのレンタル・シェアオフィスなども増加しており、社会的に副業を行いやすい環境も構築されつつあります。これから先、こうした動きはさらに加速していくと考えられます。
実は、法律で禁止されていた公務員にも、副業を容認する流れが出てきています。政府が、NPOやNGOなどの公益活動に目的を限定し、兼業を認める方針で国家公務員の兼業を正式に認めるよう調整しているのです。
この場合の公益活動とは、利益を追求しない社会福祉などを目的とした活動のことですが、それでも、公務員を対象とした規制緩和は大きな影響を与えそうです。今後、各業界において、副業“解禁”から副業“推進”へと意識改革が行われるかもしれません。
少なくとも、あらゆる人が副業を意識せざるを得ない環境になりつつあると言えるでしょう。
その証拠に読売新聞が、直属の新聞販売代理店に副業解禁にしたのは2019年。他の新聞会社も続々と追従していくことでしょう。